糖尿病と歯周病、免疫力の低下について

世界中で、急速に増加しつつある糖尿病。2015年12月に行われた、厚生労働省の調査によると、日本人の糖尿病の総患者数は、316万6,000人にものぼることが分かっています。


◆そもそも糖尿病とは

健康な人は、食事などによって血液中の糖分の濃度が濃くなると、すい臓からインスリンを分泌して、身体の細胞に糖を取り込むことにより、血糖値の上昇を抑えています。しかし、糖尿病では、このインスリンが少なかったり、うまく働かなかったりするため、血糖値のコントロールが難しくなる病気です。

実は、この糖尿病と歯周病には、密接な相関関係があります。


◆糖尿病と歯周病 負のスパイラル

歯周病は、歯茎の炎症によってひき起こされる病気です。つまり、歯周病にかかっていると「体の一部が常に炎症を起こしている状態」であることが分かります。

歯周病で歯茎に炎症があると、体内に侵入したウイルスや細菌を処理する役割を持つ「マクロファージ」が出てきて、歯周病菌と熾烈な戦いを繰り広げます。しかし、自分だけでは処理しきれなくなると、仲間を呼ぶために「炎症性サイトカイン」という物質を放出します。歯周病が悪化すると、歯周病菌が一層増えるため、マクロファージが援軍を求めて、さらに炎症性サイトカインを放出することになるのです。

一方、糖尿病は、身体のどこかに炎症があると、症状が悪化してしまうことが分かっています。その理由が、炎症のある組織から産出される「炎症性サイトカイン」。炎症性サイトカインは、インスリンの働きをグッと弱めてしまうからです。


つまり…、

歯周病の悪化(炎症性サイトカインの増加)

糖尿病の悪化(炎症性サイトカインによるインスリンの機能低下)

糖尿病の悪化による免疫力の低下

歯周病のさらなる悪化(炎症性サイトカインの一層の増加)

糖尿病のさらなる悪化(インスリンの機能の一層の低下)

という負のスパイラルが生まれてしまうのです。


歯周病を治療することで、糖尿病の症状も改善することが期待できます。これにはまず、歯科医院を受診することが先決です。是非、歯のクリニーングを受けてください。歯科衛生士が丁寧に歯石を取り除き、正しいブラッシング法を身につけるお手伝いいたします。

 

★歯周病菌が肺炎の原因に!?

平成24年に行われた厚生労働省の統計によると、心臓病やガンに次いで、肺炎で亡くなる人が増えているそうです。とくに65歳以上の高齢者に多く、その原因のひとつとなっているのが、唾液や食べ物を誤って気管に入れてしまう「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」です。

 

◆誤嚥性肺炎って?

食事で摂取した食べ物は、唾液とともに飲みこまれて食道を通り、胃に送られます。この働きを「嚥下(えんげ)」と呼んでいます。この時、食道と器官の境目にある「喉頭蓋(こうとうがい)」という「ふた」のようなものが反射的に閉じて、器官への唾液や食べ物の侵入を防いでいます。しかし、加齢によってこの機能が衰え、咳き込むことで吐き出そうとする力も弱まってしまうことで、誤嚥が起こってしまうのです。

本人や周りの人が気づく食べ物などの誤嚥を「顕性誤嚥」、本人も知らないうちに(睡眠中など)唾液の誤嚥を繰り返すものを「不顕性誤嚥」といいますが、高齢者の誤嚥性肺炎の多くは、不顕性誤嚥であるといわれています。

誤嚥した食物や唾液に大量の歯周病菌が含まれていると、免疫力の低下した高齢者では肺炎を引き起こしやすくなります。発症すると、たん、せき、発熱、倦怠感、呼吸困難などの症状が現れますが、場合によっては命に関わることもあるため、ご高齢の方は注意が必要なのです。

 

◆毎日のオーラルケアでずっと元気に

誤嚥性肺炎の原因は、主に歯周病菌などの細菌です。ですから、毎日のお口のケアが非常に重要なカギを握ります。虫歯や歯周病があると、口の中で細菌が増殖してしまい、誤嚥による肺炎のリスクが高まってしまいます。まずは歯医者さんで、しっかりと治療を受けましょう。

毎日のオーラルケアも、歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスなどを活用して、丁寧に歯垢(プラーク)を取り除くようにします。また、歯や歯茎だけでなく、舌の汚れも専用のブラシでしっかり落としましょう。入れ歯の正しいお手入れも大切なポイントです。

歯周病や口腔内環境が改善されることで、誤嚥性肺炎の予防に効果的なだけでなく、食欲も増進して栄養状態も良くなり、免疫力の向上にもつながります。

ずっと元気でいたいですよね。

 

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